<被災地の中学生のみなさんに>
13年前大きな被害を受けた三陸の町田老の中学生が3.11の被災後体験を作文にしました。文字にできたこと、できなかったこと含めて、不安の中にあった同じ中学生の声です。
全員の作文が『いのち 宮古市立田老第一中学校 津波体験作文集』となりこちらで公開されています。離れて学ぶ友達・級友や家族とつながる機会にしてください。
*この中の作文は、中学校の道徳の教科書や技術家庭科の副教材に採用され、命の尊さ・助け合うことの価値・安全について考える機会となっています。
*クリックした先のページ中盤にダウンロードURLがございます。
<被災地の先生方、保護者のみなさまに~作文集の指導をされた佐々木力也先生(震災時校長)からの応援メッセージです>
令和6年能登半島地震により、犠牲となられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。また、被災地域にある学校と地域の皆様の安全確保、教育活動と日常生活が一日も早く復することをお祈り申し上げます。
私は、東日本大震災発生時、宮古市立田老第一中学校に勤務しておりました。校庭と校舎が被災しました。多くの子ども達の家が大津波で喪失しました。被災地では避難所での生活が始まり、親や親戚を亡くした子ども達も多数いる中、学校環境も衣食住の生活も一変し、子ども達の過酷な生活が何日も続きました。私自身も実家を津波で流され、父親を亡くしました。しかし、翌年度からの学校経営を進めるためには、悲しみを力にし、この経験を子ども達のために役立てることが父の慰霊になると心に決めました。
能登半島の甚大な被害状況を見るたびに心が痛みます。しかし、テレビ放映されたある学校の始業式、友達と再会し談笑している子ども達の様子、「元気な姿を見て、とても嬉しく思っています。」と力強く語った先生の頼もしい姿を見て、石川の人たちは明るさと強さを持っていると感じました。
先生方のご苦労は計り知れません。年度末と次年度以降の経営、子ども達の心と体の健康把握、受験指導、地域との連携、人事等で課題が累積していると思います。老婆心ながら申し上げます。まずは、子ども達も先生方も心身の健康に留意しながら、無理をせず、力を合わせながら様々な課題を乗り越えていってほしいと思います。
そのためには、子ども達と先生方との信頼関係が大切です。同じ震災を体験した者同士だからこそ生じる人間関係を大事にしながら、子ども達の基本的な自尊感情(自分の存在を無条件に肯定する感情)を形成するために、温かく強固な師弟関係を作ってほしいと思います。そのためには、日常生活の中で寄り添い、横並びの関係の中で、子ども達や石川の未来を考えていってほしいと思います。具体的には、元気に挨拶をかわし、授業を大切にし、一緒に給食を食べ一緒に掃除すること等の日常的な活動をよろこびとし、学校を支えている多くの支援者や地域の方々に感謝しながら子ども達の自尊感情を豊かに育ててほしいと思います。
私は、震災の記録と発信の一つとして津波体験作文集『いのち』を震災から2年目に、岩手大学地域防災研究センターから発行してもらいました。当日の避難の様子、復興のねがいや自他のいのちの大切さが綴られています。PTG(心的外傷後成長)という言葉があります。震災を経験した子ども達は、トラウマ体験を乗り越え、震災で得た学びや教訓を得て、人間的にも大きく成長し、学校や地域の復興・発展に寄与する人に確実に育っていくと思います。「北陸地方は復興します、能登半島は再興します。」いつか被災地を訪問します。その時、一緒に震災体験を振り返り、地域や人間の復興の在り方、自他のいのちの大切さについて改めて考えることができればと思っております。
佐々木力也